私がそんな状態なのに彼は全く気にした様子もなく、嬉々として私の洋服を選び続けている。明らかに二人は浮いていた。むしろ、冗談だと笑ってくれた方が嬉しかったのに、彼はあっさり頷いた。少しでも照れながら言ってくれでもしたら、その言葉にも信憑性があったかもしれないが、あまりにさらりと言われた上に、こんな美少女相手に言われても信じられない…っていうか、それは寧ろフィリーの方がその言葉通りだ。
買ったところで絶対に着ない。言いながらグイグイ引っ張っていくフィリーに抗うこともできただろうけど、あまり意地を張って折角のデートを台無しにしたくない。そんな風に思いつつフィリーに引っ張られるままだった所、前を見ていなくて誰かにぶつかる。相手はだいぶ小さな背丈の人だったようで、よろめいて尻餅をついてしまっていて私は慌てた。
顔を上げた瞬間に交わった視線の先の瞳の色に、思わず息を飲む。宝石のように煌めく赤い瞳、短くてもサラサラな銀色の髪、天使のように美しい少女…私は彼女を知っていた。混乱する私だけど答えはすぐに分かった。私の背後から彼女を呼ぶフィリー。そのフィリーに対してバツの悪そうな顔をする彼女。それが全ての答えだった。嫌な予感に頭が真っ白になった。私の胸くらいの背丈の彼女が、可愛らしく頭を下げながら自己紹介をする。
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